tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本の国際収支の構造変化:発生する諸問題とは?

2018年09月25日 11時56分19秒 | 経済
日本の国際収支の構造変化:発生する諸問題とは?
 加工貿易、輸出立国を旗印にした日本が変わりつつあります。世界の工場と言われてきた中国も対米輸出でトランプの壁に突き当たっています。
 一国の国際収支構造は、その国の発展とともに変わることになるようです。

 変わってゆく行く先は何処でしょか。1つの典型はアメリカでしょう。国内の主要産業地帯は「ラストベルト」と化しても、海外へ進出した米系企業の工場からの安価な製品の輸入で豊かな暮らしをすることを狙ったのでしょう。
 しかし、付加価値の多くの部分は進出先の国のGDPとなり、第一次資本収支(海外からの利子配当所得)やサービス収支の黒字は増えても、増大する貿易収支の赤字を埋めきれなくなり赤字国に転落しています。

 その対策として、先ず相手国にアメリカの国債を買わせる、さらに、金融資本主義、金融工学を発展させ、マネーゲームのキャピタルゲインで赤字解消を狙いましたが、サブプライム・リーマンショックで挫折、頼みのアメリカ証券(高格付け)の信用は失墜、残された手段はトランプ流「関税戦略」というのが現在の姿です。

 こうした流れの基本線を見ますと、「コストの安い地域への工場進出」「安価な製品の輸入」「第一次所得収支の増大」の組み合わせの問題点が見えてきます。

 人間は付加価値(GDP)で生活しているのですが、付加価値の大部分は製造過程で生じます。その配分は人件費7割、資本費3割(労働分配率70%)辺りが一般的でしょうか。
 資本費の一部を利子配当で受け取っても付加価値の大部分は進出先の国のGDPに人件費として計上されるのですから、次第に貿易赤字は資本収支黒字を上回り、遂には赤字国になるのでしょう。

 対策は、製造部門の適切な規模を、国内に残しておくことでしょう。
 例えば、トヨタは国内生産300万台は死守したいと言っています。キャノンやダイキンなどは国内工場を自動化・無人化して、海外生産を国内に引き戻すこともしています。
 日本企業のアプローチは「出来るだけコスト安の海外生産に」というアメリカ企業とは些か違うようです。

 この違いはどこから来るのでしょうか。恐らく、今現在の利益極大を考えるアメリカ企業と、長期の存続と発展を考える日本企業の違いでしょう。
 付け加えれば、日本企業は、国と企業の利益相反についても、本能的に読み切った行動をしているのではないでしょうか。

 しかし日本企業も変わります。アメリカ流に憧れる新時代の経営者もいらっしゃるようです。
 今は万年経常黒字国と言われる日本ですが、前々回、前回お示ししたグラフの行く先はどうなるのか、(トランプさんの圧力もあり)注視する必要もありそうです。

 ついでにもう一つ、今の日本で起きている問題を付け加えておきましょう。
 第一次資本収支の太宗は海外子会社からの利子・配当として親会社、つまり企業に入るわけです。
 企業として考えますと、これは海外の従業員に人件費を支払った残りの部分なのです。つまり人件費への配分はもう済んでいるわけで、そう考えてきますと、これで利益や内部留保が積みあがっても、日本の従業員に分配するべき性質のものではない(日本の従業員への賃金支払の原資として考える必要はない)という理屈もなり立ちます。

 最近の内部留保論争の根っこは、企業の(多分)無意識の思考回路の中にあるここうした認識に関係しているのではないかという推論も成り立つのではないでしょうか。

 企業の国際展開には、国や社会の状況との いろいろな関連を見ていく必要がありそうです。

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